素人AV体験撮影275
寿美はガチガチに緊張していた。
それは今日の撮影が彼女にとって人生最大の決断だったからだ。
寿美がこの決断をしたのは単純な理由だ。
ただ自分という人間を主張したかったのだ・・・。
物心ついたときから目立たない性格で、旅行に行った際も親に忘れられて置いてけぼりにされたことさえある程だ。
小学校に上がったてからもまったく目立たず、大学生になるまで希薄な人間関係を築いてきた。
特に問題があるわけでもない、平坦な人生を歩んできた。
自分のそんな性格に対して特に考えたこともなかったし、人間関係にしてもこのままでいい、そう思ってきた。
そんな性格に疑問を抱いたのは一年前、寿美にとって人生のターニングポイントともいえる出来事が起こった。
それは「一目惚れ」だった。
相手は大学の先輩、まったく関わりのない相手だったのだが、キャンパスを歩いているときに偶然目にしたその先輩に、人生初めての恋をしたのだった。
なにが寿美の琴線に触れたのか、それは自分でもわからない。
それはまるで運命の出会いのような衝撃が走ったという。
そして寿美はその衝撃に身を任せ、これも人生初めての男に声をかけるという行為をした。
正直話すことなど何もない、しかし、話さずにはいられない。
そんな衝動にかられたのだという。
そして発した言葉が「ご、ごきげにょう」だった。
しまった・・・と思った。
現代ではまず使うことのない「ごきげんよう」という挨拶、「お嬢様かっ」と思わず自分を突っ込みたくなった。
しかも最後噛んだ。
もう終わった。
どうせこんな気持ち悪い挨拶、シカトされる、そう思って俯いていたのだが、自分の前からなぜか「クスクス」と笑い声が聞こえた。
恐る恐る顔を上げてみるとそこには笑いを堪えながらも、ニコニコしたカレの顔があった。
そうして一言、「はい、ごきげんよう」と満面の笑みで返してくれたのだ。
寿美はまるで天にも登るような気持ちで満足し、その場をふらふらと去ってしまった。
そして気付いた頃に後悔して。
もっと話しておけばよかったと・・・。
そうして寿美はカレと出会った。
カレとの出会いから何も進展しない日々が約半年続いた。
最初の出会いのような勇気も、もう出なかった。
話そう話そうと思っていても、全く踏み出せない。
そうやって時間は過ぎて行った。
そうした日々を過ごし、やっと決心した寿美は、ついにカレに話しかけた。「お久しぶりですね」そうあくまでも自然体で。
そうして返って来た言葉は「何処かでお会いしましたか?」だった。
彼女は恥ずかしくなり、逃げるようにその場を去った。
そうして気付いた。「自分にとって一生心に残る思い出も、カレとっては日常の一部。
思い出にすらなってなかったのだ」という当たり前のことを。
そしてみんなそんな経験は当たり前のようにしていることにも。
いかに自分の人生がつまらないモノだったのかを、やっと知ったのだった。
そして彼女は決意した。
自分という存在を世の中に認めて貰いたい。
その決意の第一歩が今日の撮影だ。
たまたま街を歩いていたら声をかけられたAVのスカウト、これこそ運命。
そう彼女は決心した。
彼女は変わる。
これから世界に羽ばたくための翼を、今日、得るのだ。