初々107
昨日の空は青かった。
彼女はふとそう思った。
そして今日の空も昨日と変わらず青い。
だが彼女の目には少し違って映っていた。
やけに空が低く見える。
この青くて綺麗な空も所詮は脳が作り出した幻覚なんだ。
そう思えてくる。
そう思うことが不思議だった。
くだらない。
こんな思考に何の意味も無い事は言われるまでもなく、彼女が一番よく分かっている。
かと言って、学校や仕事、人間関係、他の事にはどれほどの意味があるのだろうか?
自分自身ではどうにも出来ないもの。
自分でもどうにか出来るもの。
それさえもよく分からないもの。
意味があるのかどうか、結局は自分次第なんだろう。
決められた囲いの中、だけど全ては自分次第。
それが彼女に重くのしかかり、倦怠感ばかりが付きまとう。
正解のない自己問答。
そして無常観。
泣きそうになる。
普段は心の奥に押し込めているそんな思考。
いつもは普通に友人と遊び、彼氏とデートをし映画を見て、なりたい自分を目指して嫌々ながらも勉強をする。
だが、友人との会話、昔行った事のある思い出の場所、日常生活の中、ふとした切欠で彼女はそんな思考を繰り返すのだ。
そして、いつも行き着く答えは一緒だった。
それでも同じ思考を繰り返してしまうのは、彼女自身がその答えに納得してないからなのだろう。
もしくは、その答え自体がたいした意味を持っていないからか。
結局はそんなもの。
その中で自分はどうするかが重要なのだろう。
彼女は携帯電話を片手にとり、某大手SNSで知り合った男に連絡を入れた。
彼と彼女は考え方が似ていた。
だが彼は彼女と違い、そんなものなんだと割り切っているようだ。
それを受け入れた上で毎日を楽しんでいるように見える。
彼女はそれが羨ましかった。
こんな自問自答に駆られた時は、彼に連絡を取るのが常だ。
そうすると、少し気持ちが楽になる。
そして今回、彼と初めて会う事になった。
次の日、渋谷で待ち合わせる。
待ち合わせ場所で待っていた彼は、スラッとしていて背が高く、思っていた通りの男だった。
改めて軽く自己紹介をし、喫茶店へと向かう。
今までのやり取りでなんとなく分ってはいたが、彼はアダルトビデオの撮影を仕事としているようだ。
そして、「せっかくの人生なんだから楽しまなくちゃ」と彼に誘われ、ビデオへの出演を決めたのだった。